今回はシリーズ第2弾。いよいよ、星のや富士での脱デジタル滞在について詳しくご紹介していきます。

星のや富士

基本情報

星のや富士は、2015年10月に開業した日本初のグランピングリゾート。都会では体験できない「本能的に心地良い空間」を目指して生まれました。

6haにもわたる広大な山面には、キャビン(宿泊施設)やパブリックエリアが設けられ、最上層のクラウドテラス(標高約930m)には焚き火スペース、ライブラリーカフェなどがあります。河口湖方面を望めるキャビンには屋外テラスがあり、自然とのつながりを常に感じられます。

脱デジタル滞在について

星のや富士の脱デジタル滞在は「六根清浄(ろっこんしょうじょう)」という、富士の地に伝わる教えを実践するためのプログラムとして生まれました。

山そのものが神として崇められてきた富士山では、「登拝(とはい)」が昔から行われてきました。登拝とは、山を登ることで欲望や迷いを断ち、心身を清らかにするための修行です。

脱デジタル滞在では、かつての行者にならい、富士山の麓にある鳥居から登山をスタート。

道中では、江戸時代から山岳信仰を行う人たちの支えとなった「御師の家」に立ち寄ります。宿坊として、彼らを迎え入れてきた御師の家では特別な料理を堪能します。

その後、富士山の吉田登山道の入り口となる馬返しから3合目までをガイドさんと共に登ります。

このような本格的なプログラムに併せて、星のや富士の誇るグランピング施設で日常から離れた時間を過ごせるのが大きな魅力です。

それでは、写真とともに「脱デジタル滞在」プログラムの全貌に迫ります。

脱デジタル滞在へ

到着

河口湖周辺へ

星のや富士は、中央自動車道・河口湖ICから車で10kmほどのところに位置しています。

ゆるやかな山の斜面に点在していて、晴れた日には河口湖を一望することも。

ナビの示す通りに車を走らせると、星のや富士のロゴがあしらわれた木造の建物にたどり着きました。

「ホテルらしきものは見当たらないな」と思いつつも、ひとまず駐車場に車を停めます。すると、星のやスタッフの一関さんが出迎えてくれました。

自分のバックパックを選んで出発

ここは、到着したお客さんを出迎えるためのスペース。

壁一面にバックパックが飾られ、探検に出かけるかのようなわくわく感が早くも高まってきます。

冒険心をくすぐるグッズが。ヘッドライトは夜間に施設内を散策する際に使用。

好きな色のバックパックをひとつ選びます。

滞在中の相棒となる鞄のなかには、探検を応援するさまざまなグッズが。

次に、星のや富士のマップも手渡されます。

河口湖に近いエリアに立ち並ぶキャビン。山の上に向かう途中にはフロントデスクがあり、そこを越えてさらに登っていくと、森の中でくつろげるクラウドテラスが広がっています。

移動は専用SUV車で

キャビンまで私たちを送ってくれるのが、おしゃれな専用SUV車。急な斜面を力強く駆け上がり、ホテルまで向かいます。

コンクリート造りのキャビンに入ると、真っ先に目に飛び込んでくるのが雄大な河口湖です。

(キャビンの中からの景色はぜひご自分の目で体感ください…。)

スコープ型のキャビンは、人工物の冷たさを感じさせることなく、優しく自然に溶け込んでいます。

外にはテラス席。広々としたソファに寝そべってただ目の前の景色を眺める…。ここにいると自然とそんな過ごし方になっていきます。

デジタル機器を預けて…

鹿皮でできたケースに収納

早速、デジタルデバイスを預かってもらいます。

デバイスがおやすみするのは、こちらの鹿皮製の専用ケース。

ケースができるまでのエピソードはぜひスタッフさんに訊いてみてください

クラウドテラスを散策

トレッキングまで少し時間があったので、早速クラウドテラスを散策してみます。

キャビンを出て、階段を登っていくと、なんとリスが。

フロントを抜けて、クラウドテラスに入ると雰囲気は一気に変わります。

クラウドテラスにはいくつかのウッドデッキがあり、雲のように連なっています。

各ウッドデッキには、趣向を凝らしたチェアが並んでいます。

「普段スマホを使っていると、どうしてもうつむきながら過ごしてしまいがち。ここでは、できるだけ空を見上げてくれればと思っています。」

と、一関さん。

チェアに腰掛け、目線を上にやると、自分が森に囲まれているのを実感しました。

寝袋が置かれているところも。

クラウドテラスの最上層には、ライブラリーカフェと焚き火ラウンジがあります。

ここは宿泊者の憩いの場。昼は木漏れ日を、夜は焚き火の炎を求めて、自然に人の集まりができるそうです。

金鳥居へ

かつての行者が歩んだ道を辿る

脱デジタル滞在のアクティビティ。ひとつめは「かつて富士山を目指した修行者たちが歩いた道をたどる」というもの。

富士山は古来より人々の信仰の対象とされ、昔から修行が行われてきました。

江戸時代には「富士講(ふじこう)」と呼ばれる人たちが集団で富士山を訪れ、その頂を目指したといわれています。

金鳥居は富士山の鳥居とも考えられている

通常、富士山というと5合目まで車で乗り入れ、そこから登山をするという方が多いかもしれません。

今回は、当時の行者たちにならい、1合目から登拝します。

御師の町を歩く

かつての修行者にとって、富士山への登山は決して気楽なものではありませんでした。

死を顧みず、修行に出向く人たちを支えたのが「御師(おし)」です。

御師の家は、富士信仰を継承する場としてだけでなく、宿泊所として行者を迎え入れてきました。

御師の家。玄関までの長い道(タツ道)が特徴的。

現世との区切りとなる玄関前の小さな川(ヤーナ川)を横切って、屋内へ入ります。

今回訪れたのは「筒屋(つづや)」。

現在も営業を続ける御師の家は、筒屋を入れて2家のみです。

私たちを明るく迎え入れてくれた女将さん。

登山者にとって必食の、じゃがいもとヒジキを使った料理をふるまってくれました。

かぼちゃのマリネ風など、身体に優しいものばかり。そして、どれも力が出そうです!

とにかく元気なお母さんが、今までの人生のことを少し語ってくれました。

聞いてみると、山あり谷あり。

それでも、

「元気のコツ?いやなことは頭に入れないこと!」

とさらって語っていたのが印象的でした。

富士講の人たちも、こうしてお母さんに元気をもらって、山に向かうのでしょうか。

メンバー全員。すっかりお母さんのファンになりました。

富士山3合目を目指しトレッキング

筒屋のお母さんにお礼を言い、いよいよ富士の山へ。

浅間神社で参拝をして、いよいよ入山です。

3合目まで案内をしてくださったのが、近藤さんです。

近藤さんは、富士山登山学校ごうりきで代表を務めるベテランガイド。

脱デジタル滞在でのトレッキングのほか、星のや富士の樹海ツアーなども手がけています。

実に600回以上もの登山経験をもつ、近藤さん

「ゆっくり歩きましょう。」

普段よりもかなり遅めのスピードで歩くと、実に色々な音が聞こえてきます。

キツツキが木をつつく音。ヤマバトの鳴き声。

いつもはじっくりと見ることがない、野草たち。

六根清浄の六根とは、人間にやどる感覚(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚・意識)を指すのだそう。

自然の中で、現代生活で着古した鎧を脱ぎ捨てる。

頭だけでなく。身体全体で自然を感じながらゆっくりと歩を進める。

「自然」に、感謝の念がこみ上げてきました。

それでも、感謝の対象が何なのかは分かりません。

この素敵な機会に?

一緒に登ってくれる仲間に?

いつも頑張っている自分に?

おそらく、その全てに対してなのでしょう。

そして、現代生活で生きる自分がいかに「不自然」に、窮屈な心持ちで生きてきたかを感じたのです。

「自然の中では何もごまかせないんですよ。」

そう語る近藤さん。まさに六根清浄の教えを現代に伝えてくれる存在です。

自然のなかで、デバイスから離れ、第六感が研ぎ澄まされる。

第六感が冴えるにつれて生まれる気持ちが感謝。

なんだか不思議な体験でした。

「自分が早歩きして毎日を通り過ぎていく中で、見落としていたものは何だろう。」

そう考えながら、山を下っていました。

夕食

無事に下山して、再び星のやまで。

キャビンに戻り、待ちわびた夕食の時間。

テラスで、景色を見ながら贅沢なひと時を過ごしました。

テーマは「星のや流御師の料理」です。

星のやのシェフが、実際に御師の家での料理を体験してこのコースが作られたそう。

郷土料理のほうとうをはじめ、どれも山歩きで疲れた体に優しい料理ばかり。

食事の味付けはあえて控えめ。

五感が冴えている分、素材の香りがしっかりと感じられます。

各テラスには、エタノールを使用した暖炉が灯っている

その後、再びクラウドテラスへ。

昼間とは異なる、静謐な空間がありました。

ギターの調べに耳を傾けながら、焚き火を見つめます。

木々の間から見える満月は雲に出たり入ったり。

体と心に心地良いものしかない空間。

周りを見ると、同じように焚き火を眺める宿泊者の方々ばかりでした。

誰かと言葉を交わしているわけではないのに、人との繋がりを感じます。

さて、明日は早朝から火起こし。

早めに寝て、明日に備えます。

早朝の焚き火起こしと瞑想

翌日は5時半に起床。クラウドテラスに行くとすでにスタッフさんが待ってくれていました。

火起こしを教えてくれるのが、星のや富士のグランピングマスター。

「まずは種火となる、落ち葉と木の枝を集めましょう。」

カゴを手にテラス内を散策して焚き火の材料を探します。

 

拾ってきた落ち葉や木の枝を大きさ別に並べていきます。

 

松ぼっくりも焚き火起こしに使えるとのこと!

火をつけるのも本格的に…

無事に火がつきました!

瞑想は堅苦しいものではなく、焚き火の前で静かに過ごすというシンプルなもの

火をつけた後は、コーヒーを飲みながらサイレントタイムを楽しみます。

ゆっくりと火が昇ってくるのを感じながら、静寂な時間を味わいます。

朝食

部屋に戻ると、朝食の準備が。

ボックスの作りが面白く、棒を引き抜くと開く仕組みになっています。

パンやスープをいただき、しばし朝の贅沢な時間を楽しみます。

デジタル機器の返却

デジタルデバイス返却の時間になりました。

デジタルデバイスから離れ、心も頭も澄んだ感じがしています。

せっかくなので、電源はオフのまま帰ることにしました。

私たちをご案内してくださった一関さん

脱デジタル滞在を体験した気が付いたのは、ストーリー仕立てのように考え抜かれたプログラムです。

富士に昔から伝わる六根清浄を学び、実践できるものは何か。

その問いから生まれたのが、脱デジタル滞在だそうです。

オフラインの状態で目の前のヒト・コト・モノと関わりつつも、内省的な時間をつくる。

そのバランスが絶妙だと感じました。

そして、星のやスタッフさんの心配り。

2日間に渡って私たちをガイドしてくださった一関さんをはじめ、スタッフの方、富士山ガイドの近藤さんなど温かい人たちばかりに囲まれて過ごせました。

「お客さんが、遠くから自分の家に遊びに来た友達だったら?」

スタッフさんは、常にそう考えながら行動しているのだそう。

また、自分の得意なことを活かして、お客さんに喜んでもらうことも大切にしているそうです。

施設の素晴らしさだけでなく、スタッフそれぞれが星のや、そして、地元に対しての愛を持って仕事をしているのがひしひしと伝わってきました。

自然と人が協和する空間。

だからこそ、居心地が良いと感じるのかもしれません。

非日常の空間で、日常のあり方を考える

記念に1枚!

星のやのようなリゾート施設が脱デジタル滞在を開催されているのは、当協会としてもとても嬉しいことです。

また、デジタルデトックスは時代が必要としているコンセプトだと再確認しました。

今回、私たち協会スタッフにとっても大きな学びがあり、お招きいただいた星のやの方々には感謝しています。

次回は、脱デジタル滞在を提供している他の星のや施設について紹介していきたいと思います!

星のや富士の公式HPはこちらから。